愛犬が年老いてきて、介護が必要になったという飼い主さんも多いのではないでしょうか。人間と同様、犬も歳を取るにつれて体の機能が低下するため、食事やトイレ、散歩などさまざまな場面で介護が必要になります。
ただし、体調によってケアの方法は異なるため、飼い主さんは普段から愛犬の様子をよく観察しておくことが重要です。
この記事では、老犬の介護について詳しく解説します。必要なケアや役立つグッズも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
介護が必要な老犬のサイン
介護が必要な老犬のサインとして、以下の5つが挙げられます。
- 目が見えていない
- 自分でトイレができない
- 自分でご飯が食べられない
- 足腰が悪くなり歩けない
- 認知症や痴呆などを発症している
シニア期は小型犬で6〜7歳、大型犬で5〜6歳頃から入りますが、介護が必要となる時期は年齢だけではありません。飼い主さんは愛犬のサインを見逃さないことが大切です。
目が見えていない
緑内障や網膜剥離などの病気や老化で目が見えなくなることがあります。もともと目は良くありませんが、ある程度の景色は見えているので、視界が失われることによってストレスを感じやすいです。
目が見えなくなった場合、嗅覚と聴覚を使って周りの様子を観察しますが、老犬はそれらの機能も低下してしまいます。
自分でトイレができない
老犬になると足腰や内臓が衰えるため、中腰でトイレができなくなります。また、病気によって自分でトイレができなくなるケースも多いです。そのため、老犬はおもらしや排泄の回数が増える傾向があります。
自分でご飯が食べられない
老化によって、咀嚼力が衰えたり、消化器官が弱くなったりします。今まで好きだったご飯やおやつが食べられなくなってしまうことも多いです。
愛犬が自分でご飯が食べられなくなったときは、飼い主さんの手から食事を与える必要があります。
足腰が悪くなり歩けない
老化によって足腰が悪くなると、歩けなくなって寝たきりの状態が多くなります。健康のために多少は動いた方が良いですが、無理に運動させるのは避けましょう。疲労が蓄積されたり、心臓に負担がかかったりすることがあります。
認知症や痴呆などを発症している
犬も人間と同様、認知症や痴呆を発症することがあります。夜泣きや徘徊をする場合は、その可能性が高いです。
特に15歳前後になると発症するリスクが高まりますが、先天性やストレス、脳の血管障害が原因の場合もあります。
【シーン別】老犬の介護方法
老犬の介護はさまざまな場面で必要となり、それぞれ方法が異なります。
- 食事の介護
- トイレの介護
- 散歩の介護
- お風呂の介護
- 床ずれの介護
- 認知症の介護
介護を始める前に、まずは正しい知識を身につけることが重要です。老犬の介護方法をシーン別に詳しく解説していきます。
食事の介護
自分で食事ができない場合は、柔らかいご飯を与えるのが基本です。咀嚼力も衰えているため、硬い食べ物を食べると喉に詰まらせてしまうリスクが高まります。小粒や半生のドッグフード、介護食などのウェットフードを与えるのが望ましいです。
手作りの場合は、飲み込めるようにできるだけ食材を細かく刻みましょう。とろみをつけたスープと一緒に与えると、犬も食に対しての楽しみを感じてくれるはずです。
トイレの介護
上手く自分でトイレができなくなったら、おむつが必要になります。おむつを履かせておくと部屋が汚れなくなるため、掃除の手間が最小限に抑えられます。
ただし、おむつがストレスに感じる犬も多いです。おむつを初めて履かせるときは、特に愛犬の様子をしっかり確認しましょう。
また、マッサージによって上手くトイレができるようになる可能性もあります。おしっこが溜まっているときは、膀胱がある下腹部を両手で挟んで軽く押すと良いです。
排便ができない場合は、オリーブ油などをつけた綿棒を少し肛門に入れて小さく回し、促すと出てくることがあります。腸を「の」の字を描くように優しくマッサージすることも効果的です。
散歩の介護
歩行が難しい犬は散歩ができません。しかし、寝たきりの状態が続くと体に悪い影響を及ぼします。愛犬に散歩したいという意思がある場合は、時間がかかっても付き合ってあげましょう。
ただし、普段と同じ首輪は使わず、愛犬にあったハーネスをつけて散歩することをおすすめします。ハーネスとは、体を支えるために使用する器具です。体を支えながら散歩させることが可能となるため、歩けないストレスが軽減されます。
お風呂の介護
おむつや介護食によって体が汚れてしまうことが多いため、こまめにお風呂にいれることが大切です。お風呂のときは、愛犬の負担を最小限に抑えることを心がけましょう。体が乾きやすいため、晴れている日がおすすめです。
ぬるま湯が入ったボウルの中でシャンプーを泡立てて、スポンジやタオルなどにつけて優しく洗います。洗い流すときは、泡がついていないスポンジにぬるま湯を染み込ませましょう。
しっかり泡を洗い流したら、最後は吸水性の高いバスタオルで体を拭いてあげます。寝たきりの場合は、シャンプータオルや蒸しタオルを使うと良いです。
床ずれの介護
犬も人間と同様、寝たきりの状態が続くと床ずれが発生します。床ずれとは、皮膚が長時間圧迫されて血流が悪くなり、筋肉や皮膚、皮下組織などが壊死している状態のことです。床ずれを起こさないように小まめに体制を変える必要があります。
高反発のベッドで寝かせて体への負担を軽減させる方法も効果的です。また、床に触れやすい部分は包帯で巻いてあげたり、クッションを置いてあげたりしましょう。床ずれが悪化した場合は、動物病院へ連れて行ってください。
認知症の介護
犬が認知症を発症した場合、遠吠えや夜鳴き、徘徊などの症状が見られるようになります。症状によって取るべき対応が異なるため、あらかじめ把握しておきましょう。
遠吠えや夜泣きをする場合
遠吠えや夜泣きをする場合は、犬に日光を浴びさせたり、撫でながら話しかけてリラックスさせたりするのが効果的です。足のマッサージをすることで血流が良くなり、落ち着くケースもあります。
徘徊する場合
徘徊する場合は円形のサークルを用意して、その中で徘徊させる方法がおすすめです。サークルの中で徘徊すれば、物にぶつかる心配もありません。
また、ペットシーツを敷いておくと急な排泄があっても安心です。しかし、一日中サークルの中で過ごさせるのはおすすめできません。ストレスが溜まってしまうため、こまめに外へ出してあげましょう。
老犬ケアで役立つグッズ4選
老犬ケアで役立つグッズとして、以下の4つが挙げられます。
- おむつ・ペットシーツ
- クッション・犬用ベッド
- ハーネス・車椅子
- シリンジ・食事台
あらかじめ用意しておくことで、犬や飼い主さんのストレスを最小限に抑えられます。
おむつ・ペットシーツ
自分でトイレができない場合や寝たきりの場合は、おむつの用意が必要です。ただし、おむつを嫌がる場合は、無理に履かせてはいけません。ストレスが溜まって体に悪い影響を及ぼす可能性があります。
おやつを与えておむつに慣れさせる方法も効果的です。それでも難しい場合は、どこでもトイレができるようにペットシーツを敷くことをおすすめします。滑り止め付きであれば、ペットシーツがずれる心配がなくなります。
トイレの後は、こまめにウェットティッシュを使って拭いてあげましょう。対策を行っても床や絨毯に排泄物が落ちてしまうこともあるので、アルコール消毒や臭い消しスプレーも併せて用意しておくと安心です。
クッション・犬用ベッド
寝たきりの状態が続くと床ずれが発生するため、クッションや高反発の犬用ベッドの用意が必要になります。柔らかすぎるベッドは体の負担が大きいので使わないでください。
サイズは愛犬の体格を考慮して決めましょう。また、小まめに寝返りさせることも不可欠です。ベッドカバーや防水カバーも併せて用意しておくと、清潔に保てます。
ハーネス・車椅子
足腰が弱い犬には、ハーネスが必要になります。最近では、前足用・後ろ足用が販売されているので、足が弱っている方のハーネスを選びましょう。どちらかが全く動かない場合は、犬用の車椅子がおすすめです。
寝たきりの犬には、犬用カートやバギーがあります。歩けなくても定期的に外の空気を吸わせてあげることが大切です。
シリンジ・食器台
飼い主さんがご飯を食べさせてあげる場合は、シリコン製の食器やスプーンを使うのがおすすめです。飲み込む力がない犬には、シリンジで与える方法もあります。
また、消化器官が衰えたり、首の筋力が落ちていたりする場合には、食器台の利用も効果的です。
老犬を介護する際に心がけておくべきこと
老犬の介護は決して楽なことではありません。実際に介護する際に心がけておくべきこととして、以下の6つが挙げられます。
- 頑張りすぎない
- 一人でやらない
- 愛犬に明るく接する
- 完璧思考は捨てる
- 介護スタイルを決めすぎない
- 愛犬のサインを見逃さない
介護は長く続く場合もあるため、飼い主さんが余裕を持てるようにすることが大切です。
頑張りすぎない
「できることは何でもしてあげたい!」という気持ちで、介護に励む飼い主さんは多くいます。しかし、頑張りすぎると先に飼い主さんが疲れてしまう可能性が高いです。老犬の介護は長く続くことも多いため、無理せず継続できるようにしましょう。
一人でやらない
介護は一人でやると、大きな負担となります。ストレスが溜まってしまうので、誰かに頼ることも大切です。
家族や知り合い、ヘルパー、動物病院など、頼れる場所は多くあります。介護から離れる日を作り、気分転換することも大切です。
愛犬に明るく接する
飼い主さんが落ち込んでいると、愛犬の気持ちも暗くなってしまいます。愛犬に不安を感じさせないためにも、明るく接するように心がけましょう。犬は飼い主さんのことが大好きなので、明るく接してくれると幸せを感じるはずです。
完璧思考は捨てる
介護は理想どおりに行くものではないため、完璧思考は捨てましょう。上手く行かない日があっても、自分を責めてはいけません。
飼い主さんが介護にストレスを感じると、愛犬にもその気持ちが伝わってしまいます。介護は完璧よりも継続が重要です。
介護スタイルを決めすぎない
介護に正解はありません。介護スタイルは飼い主さんや犬によって異なります。
本やネットに書いてある情報と実際の介護スタイルが違っても問題ありません。飼い主さんと愛犬が幸せに過ごせるように、柔軟に変更することが大切です。
愛犬のサインを見逃さない
介護が必要になる時期は犬によって異なります。「寝ている時間が多くなった」「散歩で疲れるようになった」などは、老化のサインのひとつです。
日頃から意識して観察していないと、気づかないこともあります。病気が隠れていたというケースも珍しくないので、愛犬のサインを見逃さないことが大切です。
少しでも病気の疑いがあるときは、早めに動物病院へ連れてきましょう。
在宅介護に疲れたら老犬ホームも検討しよう
今回は、老犬の介護方法について詳しく解説しました。どんなに元気な犬でも、いずれは老化によって介護が必要になるときが来ます。しかし、どのように介護すれば良いか分からないという飼い主さんは多いです。
あらかじめ介護の方法を把握しておくことで、いざという時に余裕を持って対応できるようになります。おむつやハーネスなど、介護で役立つグッズは積極的に取り入れましょう。
また、介護は長く続くことも多いため、継続できるよう飼い主さんのペース配分が重要です。介護疲れが解消されないときは、老犬ホームの利用も検討してください。
執筆:いぬのあのね編集部
イラスト:ヴァイクセルブラウン花咲季
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