被毛がツヤツヤで高貴なイメージがあるヨークシャーテリアは、大人しくて飼いやすい犬種であると思っている方も多いのではないでしょうか。実はヨークシャーテリアの歴史を遡ると、ネズミを退治するための犬種であり、とても活発な性格であると言われています。
このように犬を飼う前には、その犬種の性格や特徴を知っておくことが大切です。そこでこの記事では、ヨークシャーテリアの性格や特徴、飼い方のコツから気をつけるべき病気まで紹介します。
ヨークシャーテリアってどんな犬種?
被毛を可愛らしいリボンで結ぶなど、高貴で上品なイメージが強いヨークシャーテリアは「ヨーキー」という愛称で昔から愛されてきました。そんなヨークシャーテリアは一体どんな歴史がある犬種なのか、家族として迎え入れる前に詳しく知っておきましょう。
ヨークシャーテリアの歴史
ヨークシャーテリアの歴史は、19世紀のイギリスからスタートします。冒頭でも紹介したように元々はネズミを退治するために作られ、スカイテリアやマルチーズなどを交配して生まれた犬種です。
そのため、うまれた当初は一般庶民と暮らす犬種として認知されていました。しかし、キラキラとした被毛の綺麗さから「動く宝石」ともいわれ、貴族をも虜にして上流階級の人たちからも愛されるようになったのです。
ヨークシャーテリアという名前にも歴史があり、犬種が生まれた1862年当初は「ブロークン・ヘアード・スコッチ・オア・ヨークシャー・テリア」と名付けられていました。しかし長すぎる名前からなかなか親しまれず、1870年頃から「ヨークシャーテリア」と呼ばれるようになったのです。
標準サイズ
ヨークシャーテリアは小型犬の中でもとても小さい部類になり、標準的なサイズは15〜23cm程度、体重は2〜3kg程度とされています。チワワの次に小さい犬種ともいわれており、成犬になっても両手のひらでおさまってしまうサイズ感です。
被毛と毛色
被毛はシングルコートなので抜け毛は少なく、定期的にトリミングで整える必要があります。さらさらで美しい被毛を清潔に保つには、毎日のブラッシングが必須です。足回りや口周りは散歩などですぐに汚れるので、こまめに優しく拭いてあげましょう。
毛色は「ブラック&タン」「ブルー&タン」「ブラック&ゴールド」「ブルー&ゴールド」などがありますが、ヨークシャーテリアは生涯で7回毛色が変わると言われているほど変化します。
生まれてきた時はブラック&タンであったのに、成犬になる頃にはブラックがグレーになっている、なんてこともあるのです。2歳になる頃には毛色が安定するといわれていますが、実際にはシニア期になっても変化が見られる場合もあります。
寿命はどのくらい?
ヨークシャーテリアの寿命は14歳程度といわれており、小型犬の平均寿命と大きな差はありません。日頃から怪我や病気に気をつけ、長生きできるように飼い主がサポートしていくのがベストです。
ヨークシャーテリアの性格は?
ヨークシャーテリアは元々ネズミを追いかけていた歴史があるため、活発に動くことを好むアウトドアな家庭に向いています。小さい体なので幼い子供の遊び相手にも向いており、朝晩の散歩やボール遊びなどを継続できるといいでしょう。
大型犬にも負けない勇敢な性格
ヨークシャーテリアは活発な性格であると共にテリアとしての性格が強く、飼い主に忠実で賢いという特徴があります。しかし忠実であるが故に警戒心も強く、周囲の物事に敏感で吠えてしまうという一面もあります。
小さい体でありながら大型犬にも負けない勇敢な性格を合わせ持っているため、どんな相手にも屈せずに立ち向かう姿勢が見られるでしょう。そのため社会化期である1歳まではしつけに力を入れ、吠え癖や噛み癖が発生しないように気をつけてください。
ヨークシャーテリアの飼い方とポイント
犬は犬種によって飼い方のコツが異なります。ヨークシャーテリアを飼う際には、以下5つのポイントを把握しておきましょう。
- しつけに自信がある人におすすめ
- 毎日のブラッシングが必須ケア
- 朝晩は必ず散歩にいく必要がある
- ノミ・ダニ予防は欠かさず行う
- 健康維持のためにドッグフードや環境には気を配る
それぞれのポイントを詳しく解説していきます。
しつけに自信がある人におすすめ
前述でも触れたようにヨークシャーテリアは飼い主に忠実であるが故に警戒心が強く、他人がテリトリーに入ったときや周囲の匂い、物音へ敏感に反応してしまいます。そのため、犬のしつけについて知識がまったくないと、トラブルに発展する可能性も考えられるのです。
特にマンションやアパートなどでヨークシャーテリアを飼おうと考えている人は、吠え癖などで周囲の家庭に迷惑をかけてしまわないように気をつける必要があります。一軒家であっても人や車通りが多い場合は、外がなるべく気にならないように工夫しましょう。
家の中でも慣れないものには吠えたり噛んだりしてしまう可能性もあるので、子犬の頃のしつけがとても重要になります。家族として迎え入れる前にしつけの知識をつけ、飼い主としてコントロールできるような状態を整えていきましょう。
毎日のブラッシングが必須ケア
ヨークシャテリアの特徴でもある綺麗な被毛は、毎日のブラッシングで毛玉などができないようにケアをする必要があります。
特に耳の付け根や脇などの関節は、少し運動をするだけで被毛が擦れて毛玉ができやすいです。毛玉ができると汚れや皮脂が溜まりやすくなり、皮膚が炎症するリスクもあります。
動く宝石といわれるほど綺麗なフルコートを保つためには、毎日のブラッシングや定期的なトリミングが必須のケアになるのです。
朝晩は必ず散歩にいく必要がある
ヨークシャーテリアは活発で運動が好きな犬種なため、朝晩の散歩はお世話をする上で重要です。朝晩2回30分程度の散歩が理想ですが、難しいときは家の中でも運動できるような工夫をしましょう。
家に庭がある場合は庭での運動がおすすめになり、室内で遊ぶときはフローリングで滑ってしまわないように滑り止めマットなどを用意しましょう。定期的にドッグランでストレスを発散させてあげると問題行動が起きにくくなるため、積極的に取り入れてください。
ノミ・ダニ予防は欠かさず行う
ヨークシャーテリアは被毛が長いうえに散歩が欠かせない犬種のため、ノミダニ予防が重要です。ヨークシャーテリアはノミダニによる影響があってもすぐに気がつけないケースが多く、発見した時には皮膚にトラブルが起きていることもあります。
体を痒がる仕草や脱毛、湿疹、フケなどが見られたときは、すぐに動物病院で診てもらいましょう。春〜秋の時期は毎月ノミダニ予防をおこない、普段使用するクッションや毛布、ブランケットなども定期的に洗濯をして清潔感を保ってください。
健康維持のためにドッグフードや環境には気を配る
ヨークシャーテリアは小型犬の中でも特に小さい犬種のため、怪我や病気には気をつける必要があります。特に肥満になってしまわないよう、ドッグフードでのコントロール知識は飼い主が身につけておきましょう。
体が小さいヨークシャーテリアは肥満になると足腰に負担がかかるだけでなく、心臓への負荷も大きくなります。家の中で起きやすい事故にも気をつけ、滑り止めマットや犬用階段の設置などできる限りの対策はしておきましょう。
ヨークシャーテリアがかかりやすい病気
犬は犬種によってかかりやすい病気があり、あらかじめ知っているだけで予防や対策ができるものもあります。ヨークシャーテリアが特に気をつけるべき病気は次の8つです。
- タンパク喪失性腸症
- 慢性前十字靭帯断裂
- 皮膚炎
- 膝蓋骨脱臼(パテラ)
- レッグ・カルベ・ペルテス病
- 骨折
- 僧帽弁閉鎖不全症
- 膵炎
それぞれの病気について詳しく確認していきましょう。
タンパク喪失性腸症
概要 | タンパク質が漏れ出ることによって血中のタンパク質が低下する |
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原因 | 腸リンパ管拡張症、炎症性腸疾患、消化管のリンパ腫などの疾患 |
症状 | 食欲低下、下痢、嘔吐、体重減少など |
治療法 | 原因に合わせた投薬 |
ヨークシャーテリアは、他の犬種よりもタンパク喪失性腸症になりやすいといわれており、注意が必要です。タンパク喪失性腸症になると消化管などからタンパク質が漏れ出し、血中のタンパク質が低下してしまいます。
その結果、慢性的に下痢になることが多く、早期発見と早期治療が重要になるのです。下痢や嘔吐が続くときは早めに動物病院で検査をしてもらいましょう。
慢性前十字靭帯断裂
概要 | 前十字靭帯が変性し、損傷や分裂が起きる |
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原因 | 明確な原因は不明 |
症状 | 後ろ足を引きずる、左右対称の座り方ができない、後ろ足を頻繁にあげる |
治療法 | 消炎鎮痛剤の使用や外科的手術、必要であれば体重コントロールまで |
前十字靭帯断裂と聞くと「運動をしている人が急に発症する病気だ」と認識している人も多いと思います。しかし、犬の場合は運動をする過程で靭帯が断裂するのはとても稀なケースです。
前十字靭帯断裂の多くは、慢性前十字靭帯断裂と呼ばれ、加齢や体重の増加によってじわじわと靭帯に影響が出ます。後述する膝蓋骨内方脱臼を、幼い頃から放置していることが原因のひとつであるという説もあります。
片足が前十字靭帯断裂を発症すると、もう一方の足も発症してしまう可能性が高く、予防や対策、早期発見が大切です。
皮膚炎
概要 | さまざまな原因から皮膚に炎症が起きている状態 |
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原因 | ノミ・ダニ、細菌の繁殖、アレルギーなど |
症状 | かゆみ、脱毛、ただれ、湿疹など |
治療法 | ステロイドによる軟膏治療や食事療法など |
ヨークシャーテリアはシングルコートで抜け毛が少ないうえ、フルコードで被毛を長く保つ飼い主さんも多いです。そのため、毛玉や汚れによる皮膚トラブルが後を絶ちません。
被毛をしっかりとかき分け、定期的に皮膚の状態を確認する癖をつけておきましょう。飼い主が気がつかないうちに皮膚の状態が悪化しているケースも少なくありません。皮膚病になると完治まで時間がかかるため、チェック習慣をつけておきましょう。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
概要 | 膝を支えている膝蓋骨が内側や外側に外れている状態 |
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原因 | 遺伝などの先天的なもの、または怪我や転倒などの後天的なもの |
症状 | 後ろ足を頻繁にあげる、足を気にする様子がある、よくスキップするなど |
治療法 | 鎮痛剤などの投薬、外科的手術 |
小型犬に最も多い病気といわれているのが膝蓋骨脱臼です。膝を覆うように位置している膝蓋骨が内側や外側に外れてしまう状態を指します。グレード1で起きる症状は膝蓋骨を手で押すと外れるレベルになり、時々スキップをするなどの様子がみられます。
放置していると徐々に状態が悪化し、グレード4になってしまうと膝蓋骨を手で押しても正常な位置には戻らない程になってしまうので注意が必要です。早期発見で悪化させないことが大切になります。
膝への負担を減らすために、体重をコントロールし、フローリングや階段による転倒には細心の注意が必要です。また、膝に負担がかかる過度な運動も避けてください。
レッグ・カルベ・ペルテス病
概要 | 太ももの骨の骨頭が壊死してしまう病気 |
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原因 | ホルモンの影響、遺伝的因子、大腿骨頭の梗塞形成など |
症状 | 後肢に痛みが生じ、骨折などに発展する |
治療法 | 外科的手術により壊死した骨を取り除き、人工関節に置換する |
レッグ・カルベ・ペルテス病は小型犬に多い病気といわれており、太ももにある大腿骨へ血液が流れず壊死してしまう病気です。生後6〜7ヶ月の幼い子犬に発症するケースが多く、稀に片足だけでなく両足に症状が出ることもあります。
レッグ・カルベ・ペルテス病は外科的手術をしても回復までに時間がかかるため、早期発見がカギである病気のひとつです。治療後は水中でのリハビリなど、飼い主のサポートが必須になるため病気の発覚と同時に治療に向けて環境を整える必要もあります。
骨折
概要 | 骨が折れている状態、小型犬によくみられる |
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原因 | 事故などの外的要因がほとんど |
症状 | 足を床につけない、足を引きずるなど |
治療法 | ギブスによる固定、外科的手術など |
小型犬の骨折で最も多い事故は、飼い主が抱っこした状態から落としてしまうという不注意によるものです。他にも骨折の原因には交通事故やジャンプをした際の着地失敗などが挙げられますが、外的要因によるものがほとんどであるといえます。
人は骨折をするとギブスをつけて安静にし、自然治癒をするケースがほとんどです。しかし、犬は骨折をしているからと言ってじっと安静にしておくことができません。
そのため完治までに時間がかかり、ストレスから違うトラブルに発展する可能性もあるのです。犬の骨折は決して軽い事故で済まされないため、あらかじめ要因を取り除いておきましょう。
僧帽弁閉鎖不全症
概要 | 僧帽弁が変性し、閉鎖不全や血液の逆流が起きている状態 |
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原因 | 明確な要因は解明されていないが遺伝的な要因が考えられる |
症状 | 息切れ、咳、ゼーゼーといった呼吸、発作など |
治療法 | 投薬治療、酸素吸入など |
僧帽弁閉鎖不全症は小型犬の加齢に伴って発症するケースが多いといわれており、初期症状がほとんどないためすぐに気がつけないといった特徴があります。
疲れや咳、息切れなどの症状をみても飼い主のほとんどが加齢のせいだとスルーしてしまい、気が付いたころにはチアノーゼや呼吸困難まで症状が進んでいるケースも少なくありません。
シニア期に入ってから咳や息切れの症状が頻繁にみられた場合は、できるだけ早く病院で診てもらうようにしましょう。
膵炎
概要 | 膵臓に炎症が起きている状態 |
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原因 | 肥満、内分泌疾患など |
症状 | 食欲不振、嘔吐、下痢、震えなど |
治療法 | 入院による投薬 |
犬の膵炎は急性膵炎と慢性膵炎の2種類がありますが、どちらも症状に大きな違いはありません。本来食べ物を消化するための消化酵素が、過剰に分泌されることによって膵臓自体を消化してしまい発症します。
軽度であればすぐに命に関わることはありませんが、進行すると合併症など他の病気が発症するリスクが高まるため注意が必要な病気のひとつです。急性膵炎の場合は入院による治療が必要になるため、飼い主による早期発見がとても重要になります。
ヨークシャーテリアを迎える前に理解を深めよう
ヨークシャーテリアは小さくて可愛らしい犬種でありながら、テリアとしての負けん気が強い性格も持ち合わせているため飼い主との信頼関係が重要になります。特に理解が必要なことは以下のとおりです。
- 活発な性格だが警戒心も強いのでしつけが必要
- かかりやすい病気を把握し、あらかじめ予防する
- 家族をとして迎え入れる前に家の環境を整えておく
小型犬の中でも人気がありますが、飼いやすい犬種というわけではありません。家族として迎え入れるのであればここで紹介したポイントを抑え、互いに心地よく生活できる環境を整えておきましょう。
執筆:いぬのあのね編集部
イラスト:ヴァイクセルブラウン花咲季
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