犬はどうして吠える? 理由や夜鳴き・無駄吠えを止めさせるしつけ

「犬の無駄吠えがなくならない」
「犬が夜中に吠えてうるさい」
「愛犬が吠えるので近所からの苦情が心配」

このように犬の無駄吠えで悩む飼い主さんは多いといわれています。実際に犬の鳴き声は、音に関する苦情の原因でもっとも多いとされています。

しかし、犬は理由もなく吠えることはありません。飼い主さんに伝えたい気持ちや感情を表現しているのです。

この記事では、犬が吠える理由や原因、シーン別のしつけ方法について紹介します。犬が吠えるのを防止する対策方法についても解説しますので、最後までご覧ください。

犬が吠える理由とは?

犬が吠える理由は、人間が吠えるように教えてきたからです。犬の先祖といわれるオオカミは、犬に比べ吠えることが少ないといわれています。野生動物であるオオカミにとって吠えることは、敵に自分の存在を知らせるリスクにもなるからです。

一方で犬は人間の狩りのパートナーとして、また人を守る番犬として吠える能力が進化するように改良されてきました。都心の集合住宅では無駄吠えと問題になってしまう犬の鳴き声ですが、人里離れた山間部では、今も野生鳥獣から家を守る番犬として重宝されています。

しかし、都心で生活する方にとって犬が吠え続ける行為は、近所からの苦情にもつながる深刻な悩みです。ただ叱りつけるのではなく、愛犬がどのような感情を伝えようとしているのか、どのような状況のときに吠えるのかを理解し対処していきましょう。

よく吠えるタイプの犬種はいる?

犬のなかでも、よく吠えるタイプの犬種が存在します。犬がよく吠えるか吠えないかは、その犬種のルーツや任されてきた仕事が大きく関係するからです。

吠えやすい犬種は大きく以下の4タイプにわけられます。

犬のタイプ 吠えやすい理由 犬種
愛玩犬 警戒心が強く怖がりな性格の犬が多い愛玩犬。小さな身を守るため、吠えやすい犬種が多く、とくにチャイムや物音などに反応して吠えやすい傾向があります。 ・ポメラニアン
・チワワ
・パピヨン
牧畜犬 羊や牛などの群れを吠えて誘導する仕事をしている牧畜犬は、吠えやすい犬種が多く、とくにバイクや小動物などの動くものに反応して吠えやすい傾向にあります。 ・ボーダー・コリー
・シェットランド・シープドッグ
・ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
狩猟犬 獲物を追い詰めたり追い出したりして、居場所を吠えて知らせる仕事をしている狩猟犬は、吠えやすい犬種が多いとされています。

遠くにいる人間にも聞こえるようによく響く声が特徴です。

・ジャック・ラッセル・テリア
・ビーグル
・ミニチュア・ダックス・フンド
・ヨークシャー・テリア
日本犬 洋犬に比べ和犬は無駄吠えが少ないとされています。

ただし家族以外に対する警戒心が強く番犬として重宝されてきたことから、来客や物音に反応して吠えやすい傾向にあります。

・柴犬
・秋田犬
・甲斐犬

犬が吠える6つの原因を紹介


犬が吠える、おもな原因は大きく6つにわけられます。犬の無駄吠えを減らすためには、吠える原因を理解し、愛犬に合った適切な対処が必要です。犬が吠えるおもな原因は以下の6つです。

  • 警戒心・恐れ
  • 不安・寂しさ
  • 喜び・興奮
  • 要求
  • ストレス・体調不良
  • 加齢による体の変化

それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。

【犬が吠える原因①】警戒心・恐れ

犬が吠える原因のひとつに、警戒心や恐れが挙げられます。犬は何かに対して警戒心や恐れを抱くと、吠えて自分や飼い主さんを守ろうとするのです。

例えば、インターホンの音や来客などに対して、激しく吠える行為がこれにあたります。犬は自分のテリトリーや飼い主さんが危険にさらされていると感じ、守るために警戒して吠えているのです。

なかには窓から外を眺めて、通行人に対して吠える犬もいます。犬は番犬として、家を守っているのです。

【犬が吠える原因②】不安・寂しさ

犬は不安や寂しさから吠えることがあります。飼い主さんが出かける準備をはじめるとクンクン鳴いてつきまとったり、出て行こうとする飼い主さんに向かって吠えたりしますよね。

犬はもともと群れで暮らす習性があることから、飼い主さんと離れ一人で過ごすことに不安や寂しさを感じてしまうのです。また迎えたばかりの子犬は、親犬から離れた寂しさから無駄吠えが多い傾向にあります。

【犬が吠える原因③】喜び・興奮

犬は喜びや興奮を表現するために、吠えることがあります。外出先から帰宅すると、愛犬がしっぽを振りながら吠えて歓迎してくれますよね。これは飼い主さんとの再会が嬉しすぎて、興奮が収まらないからです。

他にも、散歩中に他の犬と遊びたくて興奮して吠えたり、飼い主さんとのボール遊びに興奮して吠えたりもします。

ただし、遊んでいるときに吠える場合は「ボールをなげて、もっと遊んでほしい」といった、要求吠えが混在していることも考えられるため見極めが必要です。

【犬が吠える原因④】要求

犬は自分の要求を叶えるために、吠えることがあります。「散歩に行きたい」「抱っこして欲しい」「遊んで欲しい」など、このようなシーンで飼い主さんに吠えて甘える犬は多いでしょう。

とくに迎えたばかりの子犬は、ケージから出してほしくてクンクンと要求吠えをするものです。ただし要求吠えに応じなければ習慣化することはありません。

【犬が吠える原因⑤】ストレス・体調不良

犬はストレスや体調不良から吠えることもあります。急に高い声で「キャン」や「ギャイン」など悲鳴のような鳴き声をあげたときは、激しい痛みから飼い主さんに助けを求めている可能性があります。

また耳を下げて「キュンキュン」鳴いているような場合も注意が必要です。このような鳴き声の他に、寝てばかりで動きたがらない、食欲がなくなるなど変化が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

【犬が吠える原因⑥】加齢による体の変化

犬は加齢による体の変化から、吠えるようになってしまうことがあります。「夜中に愛犬が突然吠えるようになった」と老犬の夜泣きに悩む飼い主さんは少なくありません。

犬は加齢による体の変化から、さまざまな症状が見られるようになります。夜中に突然吠える夜泣きもその症状のひとつです。人間と同じように犬も老犬になると認知症による認知機能の低下から、昼と夜が逆転し夜中に吠え続けることもあります。

他にも体の慢性的な痛みや五感の衰えからくる不安から、吠える場合もあるでしょう。

犬が吠えなくなるしつけ方法をシーン別で紹介

犬が吠えなくなる、しつけ方法をシーン別で紹介します。上述したとおり犬が吠える原因はさまざまです。犬が吠える状況やきっかけに合わせた、しつけ方法が必要とされます。犬が吠えるおもなシーンは以下の通りです。

  • チャイムの音や来客に吠える
  • 散歩中に他の犬に吠える
  • 通行人に吠える
  • 留守番中に吠える
  • 帰宅した飼い主さんに吠える
  • オヤツや抱っこをおねだりして吠える
  • 老犬が夜中に吠える

犬が吠える状況によって、適切なしつけ方法は異なります。正しく対処できるように、それぞれのしつけ方法について詳しく解説していきます。

【犬が吠えなくなるしつけ方法①】チャイムの音や来客に吠える

犬がチャイムの音や来客に吠えるのは、自分のテリトリーを侵害される恐れや警戒心からきています。「チャイム=知らない人が自分のテリトリーに侵入してくる」と記憶されているため、反射的に犬は吠えてしまうのです。

チャイムの音に慣れさせたり、来客のあるときはクレートで過ごさせたりするなどのしつけが求められます。「チャイムがなったらクレートに入る」を犬がスムーズにできるようになるまで、ハウストレーニングをしましょう。

最初はオヤツを使って「ハウス」の指示で、クレートに入るように誘導します。根気よく繰り返し教え、オヤツがなくても指示に従えるようにしてください。クレートは犬が安心して過ごせるように、上から布をかけるなど快適な空間を用意してください。

また「チャイムの音に合わせてオヤツをあげる」を何度も繰り返すと、チャイムの音によい印象を持つようになります。

【犬が吠えなくなるしつけ方法②】散歩中に他の犬に吠える

散歩中に他の犬に対して吠える場合は、いくつかの理由が考えられます。

  • 挨拶で吠えている
  • 遊びたい!と嬉しくて興奮して吠えている
  • 怖くて警戒して吠えている

挨拶や遊びたい気持ちで吠えている場合は、オヤツで気を引きオスワリをさせて犬の興奮度を下げましょう。犬の興奮が落ち着いて吠えるのをやめたら、相手の飼い主さんに許可を取ったうえで挨拶や触れ合いの時間を設けると安心です。

警戒心や恐れから吠えている場合は、オヤツで誘導し相手の犬から離れます。ある程度の距離があれば警戒心が緩み犬は鳴き止むからです。

このような場合は、犬に吠えさせないことが大切です。犬は吠える経験を重ねると「吠えると相手の犬を追い払える」と学習し、ますます吠えるようになります。愛犬が吠えだす前に相手の犬に気がついた時点でルートを変えたり距離を取ったりしましょう。

【犬が吠えなくなるしつけ方法③】通行人に吠える

窓から見える通行人に犬が吠えるときは、自分のテリトリーを守る警戒心からです。このように外からの刺激が原因で吠える場合は、犬が過ごす居住スペースを整えて刺激を取り除いてあげましょう。

犬が日中過ごすハウスやベッドは窓や玄関から離れたところに設置し、窓から外が見えないようにカーテンを閉め、視界を遮ります。

音に敏感に反応する場合は、テレビやラジオ、音楽などで外からの音を聞こえづらくしてあげるとよいでしょう

【犬が吠えなくなるしつけ方法④】留守番中に吠える

犬が留守番中吠えるときは、寂しさや不安からです。留守番に慣れていない甘えん坊の犬や一人で過ごすことに慣れていない犬に多く見られます。短時間の留守番トレーニングやハウストレーニングなどを行い、犬が一人で過ごす時間を作りましょう。

また飼い主さんが外出してから10分程度で鳴き止む場合は心配ありませんが、外出中ずっと吠える場合やトイレの失敗、破壊行動などが見られる場合は分離不安症の可能性もあります。分離不安症は放置すると重症化の恐れもあるため、見極めが必要とされるでしょう。

【犬が吠えなくなるしつけ方法⑤】帰宅した飼い主さんに吠える

外出先から帰宅した飼い主さんにむかって犬がしっぽを振りながら吠えるときは、うれしくて興奮しているからです。人間でいうと「おかえりなさい」の挨拶のようなものになります。帰宅を喜んでくれる犬の姿はかわいいものですが、近所迷惑にもなりかねません。

犬が興奮して吠えている間は、声をかけたり目を合わせたりせずに淡々と過ごしましょう。飼い主さんが犬に構わなければ、次第に興奮が収まり落ち着きます。

【犬が吠えなくなるしつけ方法⑥】オヤツや抱っこをおねだりして吠える

オヤツや抱っこをおねだりして犬が吠えることを「欲求吠え」ともいいます。犬の「欲求吠え」に負けて、ついついオヤツをあげたり抱っこしたりしていませんか。

犬は学習能力の高い生き物です。数回「欲求吠え」が叶うと「吠えると欲求を聞いてもらえる」と学習し、ますます吠えるようになってしまいます。

犬が吠えている間は反応を控え、犬から離れましょう。吠えるのを止めて落ち着いたころに要求を叶えてあげれば、犬は黙って待つことを学習します。

【犬が吠えなくなるしつけ方法⑦】老犬が夜中に吠える

老犬が夜中に吠える理由は、いくつか考えられます。

  • 認知症によるもの
  • 病気やケガによる痛み
  • 耳や目が見えないことの不安
  • 喉の渇きや空腹
  • 寒さや暑さ

このように老犬が夜中に吠える理由はさまざまです。適切な対処をするためには、愛犬が夜中に吠える理由を理解する必要があります。

老犬の夜泣きは飼い主さんも睡眠不足からノイローゼになってしまうものです。早めに動物病院を受診し、認知症や体に疾患がないか診てもらいましょう。

ベッドやクレートを快適な温度にし、飼い主さんのそばに設置してあげることで不安感が和らぎ、夜泣きが収まることもあります。

犬が吠えるのを防止する対策方法を3つ紹介


愛犬の無駄吠えを防止するためには、社会性を身につけストレスのない生活を送る必要があります。犬が吠えるのを防止するおもな対策方法は以下の3つです。

  • パピー教室で社会性を身につける
  • 犬が安心して過ごせる場所を作る
  • 散歩や運動でストレスを発散させる

犬が吠えるのを防止する対策方法を詳しく見ていきましょう。

パピー教室で社会性を身につける

パピー教室で社会性を身につけ、犬の無駄吠えを防止しましょう。パピー教室とは「犬の社会化期」と呼ばれる生後2〜5ヵ月に通う、しつけ教室のことです。

この時期に家族以外の人間や犬との触れ合い、多様な環境を経験した犬は、警戒や恐れからくる無駄吠えが少なくなるといわれています。多くの動物病院やしつけ教室では、パピー教室が開催されています。かかりつけの獣医師に相談してみましょう。

犬が安心して過ごせる場所を作る

犬が安心して過ごせる場所を作ることで、無駄吠えを予防できます。リビングや犬のサークルの中にクレートで、犬の個室を作ってあげましょう。

「愛犬を狭いところに閉じ込めるなんてかわいそう」と思われるかもしれませんが、犬は巣穴を寝床としていた名残から狭くて暗いところを好みます。ただし無理やりクレートに閉じ込めてはいけません。犬が喜んでクレートに入るようにハウストレーニングは必須です。

お気に入りのブランケットやおもちゃ、クレートに入ったときだけもらえる特別なおやつなどを用意し、犬が安心して過ごせる空間を作ってあげましょう。

散歩や運動でストレスを発散させる

散歩や運動でストレスを発散させ、無駄吠えを予防しましょう。犬にとって散歩や運動は心と体の健康を保つために欠かせない社会活動のひとつです。

散歩や運動不足でストレスが溜まると、犬は興奮しやすくなり、小さなことにも過剰に反応するようになります。散歩だけではなく、ボールやディスクを使って犬が思いっきり走れる時間も設けましょう。

吠える犬にやってはいけないNG行動

吠える犬にやってはいけないNG行動を3つ紹介します。

  • 大声で犬を叱る
  • 体を叩いたり押さえつけたりする
  • おやつを与えて静かにさせる

それぞれのNG行動について詳しく確認していきましょう。

大声で犬を叱る

犬が吠えても大声で叱ってはいけません。犬を大声で叱りつけても「吠えたから飼い主さんに叱られた」と、犬は理解できないからです。その場では吠えることをやめるかもしれませんが、理解したわけではなく飼い主さんが怖くてやめただけにすぎません。

犬にとって飼い主さんが恐怖の対象になってしまっては、心地よい信頼関係も築けなくなるでしょう。犬は理由があって吠えています。大声で𠮟りつけるのではなく、理由を理解して対処することが大切です。

体を叩いたり押さえつけたりする

犬が吠えても体を叩いたり抑えつけたり、体罰を与えてはいけません。体罰は犬がすぐに吠え止むなどの即効性を感じるかもしれませんが、犬の精神的なショックを考えると絶対に避けるべきです。

飼い主さんから体罰をうけると、犬は人間に対して恐怖心を抱くようになります。他の人に対して吠える、噛むなどの問題行動に発展することも考えられるでしょう。また体罰によるしつけでは、犬との信頼関係も築けなくなってしまいます

一般の家庭で行うしつけに適しているのは、犬の正しい行動を褒めて強化していく方法です。

おやつを与えて静かにさせる

犬が吠えたタイミングでおやつを与えて静かにさせてはいけません。犬が吠え続けているときにオヤツを与えてしまうと「吠えるとおやつがもらえる」と犬が学習してしまうからです。

オスワリなどをさせて犬が吠えるのを止め、興奮が収まったタイミングでおやつを与えましょう。

犬が吠える理由を理解して信頼関係を築こう

犬が吠える理由はさまざまです。愛犬がなぜ吠えるのか、どのような気持ちを伝えようとしているのかを理解することで、愛犬との信頼関係が築けるでしょう。犬は自分の気持ちを理解してくれる飼い主さんを信頼するようになるからです。

犬の無駄吠えが治らないからといって、犬を叩いたり怒鳴ったりしてはいけません。体罰は犬との信頼関係を損ね、新たな問題行動につながります。無駄吠えのしつけは、根気よく時間をかけて積み重ねていく必要があります。

愛犬が外からの刺激で警戒して吠えることがないように、住環境を整え安心して過ごせるように努めましょう。

執筆:いぬのあのね編集部
イラスト:ヴァイクセルブラウン花咲季

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