犬の耳掃除は必要? 適切な頻度や正しい方法・嫌がるときの対処法を解説

「犬の耳掃除は必要?」
「犬はどれくらいの頻度で耳掃除するべき?」

このような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。結論から言うと、特定の犬種や耳の病気を患っている犬は特に耳掃除が必要です。

しかし、間違った方法でケアすると、耳を傷つけてしまったり、愛犬がトラウマになってしまったりするので注意しなくてはなりません。

そこでこの記事では、犬の耳掃除の頻度や方法、注意点などについて詳しく解説します。耳掃除を嫌がる場合の対処法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

犬の耳掃除が必要な理由とは

犬の耳は入り口から鼓膜までがL字型に曲がっており、耳垢がたまりやすいです。そのため、雑菌が繁殖しやすく、定期的に耳掃除を行わないと炎症や感染を引き起こす可能性があります。

また、耳掃除によって愛犬の健康状態をチェックできます。健康な耳垢は白色や薄茶色で、耳の内部は薄いピンク色です。しかし、耳に何らかのトラブルが発生すると、耳垢が黒色や黄色になったり、臭いが強くなったりします。

耳のトラブルを防ぐだけでなく、見つけるためにも定期的な耳掃除が必要なのです。

耳掃除が必要な犬の特徴

耳毛の多い犬種、耳道の狭い犬種、耳垢が多い犬種、耳が垂れている犬種は、特に定期的な耳掃除が必要です。

これらに該当する主な犬種を次の表にまとめました。

耳毛の多い犬種 ●プードル
●ミニチュア・シュナウザーなど
耳道が狭い犬種 ●フレンチ・ブルドッグ
●ブルドッグ
●パグなど
耳垢が多い犬種 ●ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
●シー・ズー
●アメリカン・コッカー・スパニエル
耳が垂れている犬種 ●ミニチュア・ダックスフンド
●トイ・プードル
●ゴールデン・レトリーバー
●ラブラドール・レトリーバー
●バセット・ハウンドなど

以上の犬種を飼っている場合、定期的に耳掃除をしなくてはなりません。

犬の耳掃除の頻度と正しい方法

耳掃除の頻度が多すぎたり、間違った方法で耳掃除したりすると、反対に耳を傷つけてしまう可能性があります。そのため、適切な頻度や正しい掃除の方法を把握しておくことが大切です。

耳掃除をする頻度

耳の汚れチェックは週1回程度耳掃除は月1〜2回程度が最適です。ただし、耳の汚れチェックで汚れがある場合は、その都度軽く拭いてあげましょう。お散歩後や寝る前など、タイミングを決めて習慣化することをおすすめします。

また、犬の耳掃除の頻度はあくまでも目安です。通気が良く立ち耳の犬種は汚れがたまりにくいため、汚れていなければ無理に耳掃除をする必要はありません。

耳掃除のやり方

犬の耳は自浄作用があるため、目に見える汚れを優しく拭き取るだけで大丈夫です。奥の汚れは手前に押し出されるので、無理に掃除する必要はありません。

耳掃除の具体的な手順は以下のとおりです。

  1. リラックスさせて、耳に触れても嫌がらないようにする。
  2. 耳専用のクリーナーなどをコットンに染み込ませて、目に見える範囲で汚れを拭き取る。
  3. 耳掃除が終わったらたくさん褒めて、好きなおやつやおもちゃをあげる。

耳の奥は触らず、できるだけ短時間で済ませるのがポイントです。愛犬が「耳掃除 = 嫌な時間」と思わないように、リラックスさせたり、ご褒美をあげたりしましょう。

犬の耳掃除で注意するべき点

犬の耳は非常にデリケートなので、耳掃除によって傷つけてしまうこともあります。そのため、以下の点に注意が必要です。

  • 消毒用アルコールやウェットティッシュは使わない
  • 綿棒や耳かきで掃除しない
  • 獣医師の指導がない限り耳道内を掃除しない
  • 耳毛を抜かないようにする
  • 必要以上に耳掃除をしない

それぞれの注意点について、詳しく解説していきます。

消毒用アルコールやウェットティッシュは使わない

消毒用アルコールは汚れをしっかり取り除いてくれるイメージがありますが、犬には消毒作用が強すぎるので危険です。肌のバリア機能低下や常在菌の除去などの恐れがあるため、絶対に使用しないようにしましょう。

また、ウェットティッシュにも、洗浄剤や防腐剤など犬にとって安全ではない成分が含まれている可能性があります。耳掃除する際は、必ず犬用の製品を使うことが大切です。

綿棒や耳かきで掃除しない

基本的に犬の耳掃除では、コットンのみ使用します。綿棒や耳かきを使うと耳垢を奥に押し込んでしまったり、耳の中を傷つけてしまったりする恐れがあります。外耳炎を引き起こす原因にもなるため、注意が必要です。

獣医師の指導がない限り耳道内を掃除しない

耳の奥まで綺麗にできるイヤークリーナーやイヤーローションも販売されていますが、獣医師の指導がない限り耳道内は掃除しないようにしましょう。奥の汚れは自浄作用で勝手に出てくるため、無理に取り除こうとするとトラブルの原因になります。

特に、老犬や子犬への使用は注意が必要です。注入式のイヤークリーナーは犬が顔を振ることによって薬液を排出しますが、老犬や子犬は顔振りが上手くできないため、薬液が耳の中にとどまってしまう恐れがあります。

耳毛を抜かないようにする

耳の入り口周辺に生えている耳毛は、外からの汚れを防ぐ役割があります。そのため、よほど汚れがひどくない限り、耳毛は抜かないようにしましょう。

どうしても抜く必要がある場合は、トリミングサロンなどプロに任せた方が安心です。耳毛を抜くときは痛みだけでなく、素人が行うと耳道を傷つけてしまう恐れがあります。

必要以上に耳掃除をしない

必要以上に耳掃除をするとバリア機能が破壊されて、トラブルの原因となります。また、奥にある耳垢を無理に取ろうとすると汚れを奥まで押し込んでしまい、自浄作用が上手く機能しなくなる恐れもあります。

そのため、耳掃除は月1〜2回程度、汚れが気になるときはコットンで優しく拭くことを守るようにしましょう。

犬が耳掃除を嫌がるときの対処法

愛犬が耳掃除を嫌がってしまうケースは少なくありません。そのようなときの対処法として、以下の4つが挙げられます。

  • 耳に触れられていることに慣れさせる
  • 好きなおやつやおもちゃを与える
  • イヤークリーナーを体温と同じくらいにする
  • トリミングサロンや動物病院に連れて行く

飼い主が耳掃除に慣れていないと、その緊張が愛犬に伝わって警戒してしまうこともあります。そのため、飼い主がリラックスすることも、耳掃除を成功させるために重要です。

それでは、対処法について詳しく確認していきましょう。

耳を触れられることに慣れさせる

まず愛犬が耳に触れられることに慣れていないと、耳掃除を行うのは難しいです。普段のスキンシップで耳に触れる機会を増やしたり、顔周りを触るときに耳を触ってみたりなど、徐々に耳に触れられることに慣れさせましょう。

好きなおやつやおもちゃを与える

愛犬が好きなおやつやおもちゃで夢中になっている間に、素早く耳掃除を行う方法もあります。もしくは、耳掃除の後にご褒美としておやつを与えるのもおすすめです。耳掃除をポジティブなイメージに変えることで、嫌がらなくなる犬も多くいます。

イヤークリーナーを体温と同じくらいにする

冷たいイヤークリーナーを入れられるのが理由で、耳掃除を嫌がっている可能性もあります。そのような場合は、イヤークリーナーを体温と同じくらいにすることで、嫌がらなくなることも多いです。

トリミングサロンや動物病院に連れて行く

工夫しても嫌がって耳掃除をさせてくれない場合は、トリミングサロンや動物病院などプロに任せるのもひとつの手です。

飼い主が無理やり行おうとすると、怪我やトラウマにつながる可能性があります。愛犬との信頼関係も崩れてしまうので、無理な耳掃除はおすすめできません。

犬の耳垢が多いときに考えられる病気は?

犬の耳垢が多いときに考えられる病気として、外耳炎、中耳炎、内耳炎の3つが挙げられます。ただし、その多くは外耳炎であり、主な原因は感染症や炎症によるものです。

外耳炎 外耳では耳垢が作られるため、耳のトラブルが発生しやすいです。一口に外耳炎と言っても、さまざまな種類があります。
・マラセチア性外耳炎
・細菌性外耳炎
・ミミダニ症
・アレルギー性外耳炎
・異物が原因の外耳炎
中耳炎 中耳炎を発症しているときは、鼓膜に何らかの異常が起こっている場合があります。また、鼻腔の炎症が中耳に広がるケースも多いです。ほとんどの中耳炎は、外耳炎が進行することで発症します。
内耳炎 外耳炎がさらに進行すると、内耳炎を引き起こす場合があります。内耳炎は感覚障害や吐き気などが見られます。さらに炎症が広がると、神経症状を引き起こすことも珍しくありません。

病気の可能性が高い耳垢の特徴

健康な犬の耳垢は白色や薄茶色で、量も少なく、臭いやベタつきもありません。しかし、耳に何らかのトラブルを抱えている場合、次のような耳垢が見られます。

  • 黒色もしくは茶色でべっとりしている・異臭がする
  • 黄色でドロっとしている・膿の臭いがする
  • 赤黒い・耳に強いかゆみがある

普段と耳垢が異なる場合は、できるだけ早く動物病院に連れて行くことをおすすめします。耳のトラブルを早期発見するためには、定期的なチェックが欠かせません。

黒色もしくは茶色でべっとりしている・異臭がする

耳垢が黒色もしくは茶色でべっとりしている場合は、マラセチア性外耳炎や細菌性外耳炎の恐れがあります。これらの真菌は耳垢の蓄積やアレルギーによる炎症などで増えます。頭を頻繁に振ったり、耳をかいたりするのが主な症状です。

黄色でドロっとしている・膿の臭いがする

耳垢が黄色でドロっとしていて、膿の臭いがする場合は、耳の中の皮膚が細菌に感染している可能性があります。症状が進行すると、耳から膿が出るケースも多いです。

放置すると内耳炎まで進行し、さらに悪化すると首が片方に傾いたり、同じ方向に回ったりするなどの神経症状が現れます。なお、強いかゆみや痛みが主な症状です。

赤黒い・耳に強いかゆみがある

耳垢が赤黒く、かゆみも強い場合は、ミミダニ症の恐れがあります。ミミダニ症とは、ミミヒゼンダニが外耳道に寄生し、かゆみや臭いを発生させる感染症です。

赤黒い耳垢は、吸血した耳ヒゼンダニのフンです。他の犬との接触が原因で感染する場合が多く、完治するためには数回の治療が必要になります。

犬の耳掃除にまつわるQ&A

犬の耳は非常にデリケートなので、飼い主が心配になることも多いです。犬の耳掃除にまつわる質問として、以下の2つが挙げられます。

  • 子犬の耳掃除はいつからしても大丈夫?
  • 犬の耳のトラブルが起こりやすい時期はある?

犬の耳を守るためにも、疑問を事前に解消しておきましょう。

子犬の耳掃除はいつからしても大丈夫?

耳掃除の場合、特に時期を気にする必要はありません。耳を振っていたり、かゆがっていたりするときは、耳の中に汚れがないか確認しましょう。汚れがあったら、コットンで優しく拭き取ってあげます。

犬の耳のトラブルが起こりやすい時期はある?

梅雨や夏など湿度の高い時期は、耳が蒸れやすく外耳炎などのトラブルが発生しやすくなります。そのため、耳掃除が特に必要な犬種以外も、この時期は念入りに耳の状態をチェックすることが大切です。

また、アレルギーを持っている犬は、季節によって症状が出ることもあります。月1回の耳掃除以外にも、定期的に愛犬の耳をチェックするようにしましょう。

犬の耳掃除は徐々に慣れさせるのがポイント

今回は、犬の耳掃除の頻度や方法について詳しく解説しました。犬の耳は月1〜2回程度の頻度で掃除が必要です。犬の耳を掃除する際は、非常にデリケートであることを念頭に置いておきましょう。

消毒用アルコールやウェットティッシュは刺激が強いため、絶対に使用してはいけません。必ず犬用の製品を使って、優しく汚れを拭き取ります。愛犬が耳掃除を嫌がる場合は、無理に行わず、徐々に慣れさせていくことが大切です。

どうしても嫌がってしまうときは、トリミングサロンや動物病院に連れて行くことをおすすめします。

執筆:いぬのあのね編集部
イラスト:ヴァイクセルブラウン花咲季

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