飼い犬をどんなにしつけても、人を噛んでしまう可能性はゼロではありません。知らない人に撫でられたときに噛みついてしまうなどの事故が毎年必ず発生しています。
そのため、「飼い犬が人を噛んでしまったら飼い主の責任?」「飼い犬が人を噛んでしまったときはどう対応すれば良い?」など、お悩みの飼い主さんも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、飼い犬が人を噛んだときの対応手順について詳しく解説します。事故の責任や損害賠償金の相場なども紹介しているので、犬を飼っている方はぜひ参考にしてください。
飼い犬が人を噛むケースは多く発生している
環境省の「動物愛護管理行政事務提要(令和3年度版)」によると、犬による噛みつき事故は2019年以降、増加傾向にあります。2019年までは4,000件台前半〜4,400件台だったのに対して、2020年は4,600件台です。
また、噛みつき事故を起こした犬の9割以上は飼い犬であり、中には人に噛み付いて死亡させたケースも存在します。
ノーリードでの散歩だけでなく、リードをつけていても犬による噛みつき事故は発生しているため、飼い主さんは万が一に備えておく必要があります。
飼い犬が人を噛んでしまったときは飼い主の責任
飼い犬が人を噛んでしまった場合、飼い主さんは以下の責任を問われます。
- 民法上の責任
- 刑法状の責任
それぞれの責任について、詳しく解説していきます。
民法上の責任
民法上の責任では、以下のような請求に対して賠償します。具体的には、慰謝料や賠償金を支払うケースが一般的です。
- 治療費
- 通院のための交通費
- 通院などで仕事を休んだ場合の休業損害
- 精神的苦痛による慰謝料
- 服などの被害賠償
飼い犬に噛まれたことで後遺障害などが残った場合や、それによって仕事を失った場合は、高額な費用を請求される可能性が高いです。
刑法上の責任
刑法上の責任は、被害者が過失傷害罪として被害届を出した場合に問われます。過失とは、以下のようなケースが該当します。
- ノーリードで散歩していた
- 犬の飼育しているゲージに鍵がかかっていなかった
- 大型犬を子供や小柄な人が散歩していた
- 他人を襲うように仕向けた
罪が成立すると犬の占有者や飼い主に対して、「30万円以下の罰金または科料」が科されます。
また、罰金刑以上の刑では、信用失墜行為となり就業先から警戒処分を受ける可能性もあります。
飼い犬が人を噛んでしまったときにやるべきこと
飼い犬が人を噛んでしまったときにやるべきこととして、以下の3つが挙げられます。
- 相手にワクチンを受けた証明書を提示する
- 翌日までに地域の保健所に咬傷届を提出する
- 2日以内に愛犬を動物病院で受診させる
それぞれの方法について、詳しく解説していきます。
相手にワクチンを受けた証明書を提示する
飼い犬は法律によって、年に一度必ず狂犬病ワクチンの予防接種を受けることが定められています。ワクチン接種を終えると「狂犬病予防注射済証」が獣医師から発行され、役所に届け出を提出します。
日本では狂犬病の注射が義務化されていますが、念の為相手側に提示しておいた方が良いでしょう。万が一に備えて、証明書は捨てずにとっておくことが大切です。
翌日までに地域の保健所に咬傷届を提出する
飼い犬が人を噛んでしまったら、翌日までに地域の保健所に咬傷届を提出します。ただし、この届出を提出したからと言って、飼い犬を処分する訳ではありません。
保健所から事故当時の聞き取りがあり、噛みつき事故が同じように起こらないように指導を受けます。咬傷届の提出は地域に関わらず義務化されているため、必ず提出するようにしましょう。
2日以内に愛犬を動物病院で受診させる
人を噛んだ飼い犬が狂犬病や他の感染症にかかっていないかどうかを調べるために、2日以内に動物病院へ連れていきます。犬の病気は人にも感染する場合があるため、検診は非常に重要です。
また、検査後は必ず検査証明書を受け取りましょう。場合によっては、保健所に提出する必要があります。
飼い犬が人を噛んでしまったときの対応手順
飼い犬が人を噛んでしまったときの対応手順は以下の通りです。
- 相手の連絡先を聞く
- 早急に治療を受けてもらう
- 示談交渉をする
それぞれの対応について、詳しく解説していきます。
相手の連絡先を聞く
飼い犬が人を噛んでしまったら、まずは相手の連絡先を聞きましょう。今後、慰謝料や賠償金の交渉をするときに必要になるためです。相手の怪我がひどい場合は警察を呼んで事故検証を行ってもらった方が揉めずに済みます。
早急に治療を受けてもらう
見た目は大したことがなくても、感染症などの恐れがあるため早急に治療を受けてもらいましょう。
可能であれば同行し、犬のワクチン接種証明書があれば持参します。治療後は、診断書や領収書を必ず受け取ることも大切です。
示談交渉をする
飼い犬の噛みつき事故に対する対応は、相手側によって異なります。ただし、どんな場合でも、飼い主さんは誠実な態度で話し合うことが大切です。
治療費や損害賠償金は加入している保険が使えることもあるので、示談交渉をする前に必ず確認しましょう。弁護士がつけられる保険であれば、依頼した方が慰謝料計算や見舞金などの計算がスムーズです。
また、万が一裁判になってしまった場合でも、最適な方法で対応してもらえます。ただし、事前連絡なしに示談が成立すると保険が使えないこともあるため注意が必要です。
飼い犬が人を噛んだときにかかる賠償金の相場
一般的に飼い犬が人を噛んだ場合、刑事事件ではなく民事として取り扱われます。飼い主さんは相手側の治療費や病院への交通費などに加えて、慰謝料を支払う必要があります。
少し血が出た程度であれば数万円が相場です。骨まで達する怪我や全治2週間はかかる怪我の場合は20〜30万円、後遺障害が残る怪我は数百万円〜数千万円となるケースも少なくありません。
噛みつき事故に関してよくある質問
噛みつき事故に関してよくある質問として、以下の3つが挙げられます。
- 万が一に備えて保険に入っておくべき?
- 飼い犬が他の犬を噛んだ場合や物を壊した場合の対応は?
- 人を噛んで殺処分される可能性はある?
それぞれの質問に対する回答を紹介していきます。
万が一に備えて保険に入っておくべき?
しっかりしつけを行っている犬でも、噛みつき事故を起こす可能性はゼロではありません。そのため、万が一に備えて保険に加入しておくことをおすすめします。噛みつき事故に対応する保険は、一般的に以下の4つです。
- ペット保険のペット賠償責任特約
- 個人賠償責任保険
- 火災保険や自動車保険の個人賠償責任特約
- クレジットカード付帯の個人賠償責任保険
ただし、具体的な補償内容は保険会社によって異なります。加入時にしっかり確認しておくことが大切です。
飼い犬が他の犬を噛んだ場合や物を壊した場合の対応は?
飼い犬が他の犬を噛んだ場合は、応急処置を行い動物病院で受診してもらいます。その後の対応で必要となるため、連絡先も必ず聞いておきましょう。
咬傷届の提出は義務化されていませんが、提出するのが一般的です。飼い犬が物を壊してしまった場合は、弁償する必要があります。保険の補償内容に入っているケースが多いので、確認したうえで支払いましょう。
人を噛んで殺処分される可能性はある?
飼い犬が人を噛んで殺処分されるケースはごく稀です。殺処分が実行されるには、咬傷事故の頻度や程度、将来的な危険性、被害者からの要求など、さまざまな条件があります。そのため、飼い犬が人を噛んで殺処分される可能性は低いです。
愛犬が人を噛む可能性を考慮した予防や準備が大切
今回は、飼い犬が人を噛んだ場合の対応手順について詳しく解説しました。しつけられている犬や優しい性格の犬でも噛みつき事故を起こすリスクはゼロではありません。
毎年噛みつき事故は多く発生しているため、万が一に備えて保険に加入しておくことをおすすめします。また、噛みつき事故が起こらないようしつけによる予防も不可欠です。散歩中もリードを短めに持つなど、常に注意を払っておく必要があります。
ぜひこの記事を参考にして、愛犬の噛みつき事故の予防や準備を行ってみてください。
執筆:いぬのあのね編集部
イラスト:ヴァイクセルブラウン花咲季
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