犬のカーミングシグナルとは、コミュニケーション手段の一つです。話す代わりにボディランゲージを通して、相手に気持ちを伝えます。
しかし、カーミングシグナルが何を意味しているのか分からない飼い主さんも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、犬のカーミングシグナルの種類や意味について詳しく解説します。愛犬との意思疎通に役立つため、カーミングシグナルを正しく理解しましょう。
犬のカーミングシグナルとは
カーミングシグナルとは、「calming(落ち着かせる)」と「signal(シグナル)」
を組み合わせた言葉です。相手に自分の気持ちを伝えるための行動を指します。
また、不安や恐怖心、不快感を和らげたいときにも有用で、他の犬や人間とコミュニケーションを取るための手段です。
本能的に備わっており、犬のカーミングシグナルにはさまざまな種類があります。日頃から愛犬のカーミングシグナルを理解してあげることで、より信頼関係や絆を深められます。
カーミングシグナルを出す理由
カーミングシグナルを出す理由として、以下の6つが挙げられます。
- 相手に安心感を与えたい
- ストレスや不安を感じている
- 威嚇から逃げたい
- 不快なことを鎮めたい
- 自分を落ち着かせたい
- 相手を落ち着かせたい
それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
相手に安心感を与えたい
人や他の犬に対して、安心感を与えたいときにカーミングシグナルを出します。自分は友好的であることをアピールしており、散歩中に他の犬とすれ違うときに見られる場合が多いです。
ストレスや不安を感じている
ストレスや不安を感じているときに、本能的にカーミングシグナルを出します。ストレスや不安を感じていることを相手に伝え、争うつもりはないことを知ってもらうのが目的です。
威嚇から逃げたい
人や他の犬による威嚇から逃げたいときに、カーミングシグナルを出します。犬は平和主義なので基本的に争いは避けて、人や他の犬と対立せずに仲良く過ごしたいと考えています。
不快なことを鎮めたい
かゆみや痛み、苦しみなどの不快な刺激を鎮めたいときに、カーミングシグナルを出します。また、鎮めるだけでなく、その感情を周囲へ知らせる目的もあります。
自分を落ち着かせたい
不安や緊張を相手に伝えるとともに、自分の気持ちを落ち着かせるためにカーミングシグナルを出します。初めての場所や苦手な場所にいるときに見られる場合が多いです。
相手を落ち着かせたい
自分だけでなく、人や他の犬に対して落ち着いて欲しいときにカーミングシグナルを出します。
飼い主さんが怒っているときや他の犬が興奮しているときなどに見られ、自分には敵意がないことをアピールしています。
犬のカーミングシグナルの種類
犬のカーミングシグナルは、27〜30種類あると言われています。ノルウェーの動物学者である「トゥーリッド・ルーガス」が提唱したもので、代表的なカーミングシグナルは以下の通りです。
- あくびをする
- 間に割り込む
- 相手の鼻や口周りを舐める
- おしっこをする
- 背中を向ける
- 地面のニオイを嗅ぐ
- 視線を逸らす
- 伏せをする・お座りをする
- 前足をあげる
- 身震いする
- 相手にゆっくりと近づく
- 尻尾を振る
それぞれの意味について、詳しく解説していきます。
あくびをする
犬のあくびは、自分の気持ちを落ち着かせる役割があります。飼い主さんに怒られてあくびをする場合は、怒られていることに対してストレスを感じており、あくびでそのストレスを軽減しようとしています。
また、「これ以上怒らないで欲しい」「飼い主さんに落ち着いて欲しい」など、嫌なことをやめて欲しいときにも用いられるカーミングシグナルです。
その他、散歩中に知らない人が触ってきたり、知らない犬が近づいてきたりなど、ストレスを感じたときにあくびをすることで相手に不快感を伝えています。
間に割り込む
愛犬が間に割り込んできたときは、相手の犬を牽制しようとしています。
やきもちをやいていると勘違いされやすい行動ですが、飼い主さんに対して警告している可能性が高いです。快く思っていない相手との争いを避ける効果があります。
相手の鼻や口周りを舐める
相手の鼻や口周りを舐めるのは、もともと子犬が餌をねだるときに取る行動です。この行動は成長とともに、服従表現や喜び、相手への敬意を表すためのカーミングシグナルとなります。
おしっこをする
おしっこをするのは生理現象ですが、犬のカーミングシグナルである可能性も考えられます。
自分に敵意がないことを示すために、他の犬の前でわざとおしっこをすることがあります。そのニオイを相手の犬が嗅ぐことで、安心できるためです。
背中を向ける
相手を落ち着かせるために、背中を向けることがあります。通常、自分よりも上の犬に対して出すのがカーミングシグナルです。
しかし、上位の犬が下位の犬に向かって背中を向けたときは、心配ないことを知らせている可能性も考えられます。
地面のニオイを嗅ぐ
地面のニオイを嗅いでいるときは、おしっこをする場所を探していることもありますが、
カーミングシグナルの可能性もあります。
本来、よくニオイを嗅ぐ動物ですが、普段よりも回数が多かったり、目的がないまま地面のニオイを嗅いでるように見えたりするときは、自分の不安や興奮などの気持ちを抑えようとしています。
視線を逸らす
相手に対して敵意がないことを伝えるときに、犬は視線を逸らすことがあります。視線を逸らす行動と地面のニオイを嗅ぐ行動は、一緒に見られる場合が多いです。
初めて会った犬に対して、このような行動で少しずつ距離を縮めていきます。また、飼い主さんに怒られているときは、視線だけでなく体も背けて、相手を落ち着かせようとします。反対に、犬が相手の目を見ているときは、敵意を示している可能性が高いです。
伏せをする・お座りをする
伏せやお座りは自分に攻撃心がないことを表したり、自分や相手を落ち着かせたりするためのカーミングシグナルです。
しつけで「伏せ」や「お座り」を覚えさせるのは、主従関係を明確にすることにつながります。
前足を上げる
前足を上げているカーミングシグナルは、自分を落ち着かせる以外に、不安やストレスを軽減させる役割があります。反対の意味があるため、飼い主さんは愛犬の感情をしっかり理解してあげることが大切です。
身震いする
身震いしているときは、自分を落ち着かせようとしている可能性が高いです。また、緊張から解放されたときにも見られます。
相手にゆっくりと近づく
相手に敵意がないことを示し、落ち着いて欲しいときに出すカーミングシグナルです。急いで欲しくても、声を荒げたり、急かすように声をかけたりするのはやめましょう。
飼い主さんに落ち着いて欲しくて愛犬がゆっくり近づいている場合は、さらにゆっくりと近づいたり、止まったりする可能性があります。
尻尾を振る
尻尾を振るときは、好意的な意味を持つケースが多いです。ただし、尻尾の振り方によっては逆の意味を表している場合もあるため、飼い主さんはしっかり理解してあげましょう。
犬が何かに対して警戒しているときは、尻尾を上向きにして小刻みに振ります。一方で、怯えているときは、尻尾を垂らしてお尻の間に挟み込んでいる場合が多いです。
愛犬のカーミングシグナルを見つけるポイント
犬のカーミングシグナルは小さい仕草や素早い仕草が多く、見逃してしまいがちです。また、同じカーミングシグナルでも意味が異なる場合があります。
愛犬のカーミングシグナルを見つけるためには、日頃の様子をしっかり観察することが大切です。最初は難しくても、時間が経つと見つけられるようになります。
カーミングシグナルは愛犬とコミュニケーションを取る手段なので、継続して努力するようにしましょう。
犬のカーミングシグナルでよくある質問
犬のカーミングシグナルでよくある質問として、以下の3つが挙げられます。
- 子犬もカーミングシグナルをするの?
- カーミングシグナルができない犬は存在する?
- 犬同士でもカーミングシグナルはする?
それぞれの質問に対する回答を紹介します。
子犬もカーミングシグナルをするの?
生まれたばかりの子犬は上手く体を動かすことができないため、色々なカーミングシグナルを使い分けるのは難しいです。
唯一できるのは、あくびだと言われています。成長とともに自分の意思で自由に体を動かせるようになり、出せるカーミングシグナルの種類も増えていきます。
カーミングシグナルができない犬は存在する?
カーミングシグナルは、本能的に備わっている能力です。ただし、日々の生活によって失われてしまう可能性があると言われています。
例えば、ストレスが大きい環境に置かれたり、カーミングシグナルを無視され続けたりする場合です。
環境や経験によってカーミングシグナルを出さなくなっても、状況の変化によって再び使うことが確認されています。
犬同士でもカーミングシグナルはする?
犬同士でも行うカーミングシグナルは、相手の犬を落ち着かせて、不要な争いを避ける役割があります。本能的に備わっているため、犬同士のコミュニケーション手段となります。
愛犬のカーミングシグナルを理解してあげよう
今回は、犬のカーミングシグナルについて詳しく解説しました。カーミングシグナルはコミュニケーション手段のひとつで、人だけでなく相手の犬に対しても出すことがあります。
それぞれの仕草によって意味が異なるため、飼い主さんはしっかり理解してあげることが大切です。愛犬のカーミングシグナルを理解できるようになると、愛犬との信頼関係や絆も深まります。
反対に、愛犬のカーミングシグナルを無視し続けると、その能力が失われてしまう場合もあるため注意が必要です。ぜひこの記事を参考にして、愛犬のカーミングシグナルを理解してあげてください。
執筆:いぬのあのね編集部
イラスト:ヴァイクセルブラウン花咲季
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