「犬の老化がはじまる時期は?」
「犬の老化のサインは?」
「老犬はどう飼ってあげればいい?」
犬も人間と同様に老化していきます。体力が衰え、病気がちになるため、年齢に合わせた飼い方やケアが必要です。
そこでこの記事では、犬の老化がはじまる時期や症状、気をつけたい主な病気などを詳しくお伝えします。老犬の飼い方や注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
犬の老化
犬も人間と同じように老化します。そもそも「老化」とは、身体の様々な生理的機能が加齢に伴って減退していくことです。
さらに、老化が進行するとさまざまな病気にかかりやすくなります。一度老化が進んだ機能は、元に戻ることはありません。
しかし、病気を早期に発見できたら、悪化を防ぐことは可能です。そのため、愛犬の老化のサインに気づいてあげることが重要になります。日頃から愛犬の様子をよく観察するようにしましょう。
犬の老化が始まる時期
環境省のデータによると、小型犬・中型犬の7歳は人間の44~54歳前後、15歳は人間の76歳に相当します。
一方で、大型犬の7歳は人間の54歳、10歳は人間の75歳です。小型犬は10歳以上、大型犬は8歳以上が高齢犬といわれていますが、犬種や個体差によって若干の違いはあります。
犬は子犬の時期を過ぎると成犬になり、寿命の半分を過ぎたころになると中高齢期に突入します。この頃が大体7~9歳で、老化が少しずつ始まる時期です。そして、10~12歳頃になると本格的な高齢期に入り、老化現象が顕著になります。
犬の老化のサイン
犬の老化は、ある日突然始まるわけではありません。外見や行動など、以下のようなサインがあります。
- 被毛や皮膚の変化
- 視力や聴力の低下
- 口臭や歯の黄ばみ
- 食欲や味覚の変化
- 階段の上り下りやソファへの飛び乗りを躊躇する
- 散歩に行きたがらない・歩くのが遅くなる
- 睡眠時間の増加
- トイレの失敗
被毛や皮膚の変化
被毛や皮膚の変化は、わかりやすい老化のひとつです。老化が進むと、皮膚の代謝が悪くなったりホルモン機能が低下したりします。
そのため、被毛のツヤがなくなってパサつきが目立ったり、皮膚にハリがなくなったりするのです。さらに、抜け毛が増えて全体的に毛量が減っています。
また、白髪が増える犬も多いです。色素が薄くなり、鼻が真っ黒から茶色に変わるケースもあります。さらに、シミやシワ、イボができることも多いです。
視力や聴力の低下
犬も老化すると、視力や聴力が低下します。前が良く見えなくなり、壁にぶつかったり階段を怖がったりすることが増えるでしょう。
そして、眼球の黒目の部分が白く濁る「白内障」になることもあります。悪化すると、失明に至ることもあるので注意が必要です。
また、聴力の低下も顕著になります。耳も遠くなり、名前を大声で呼んでも反応しないことが増えるでしょう。
口臭や歯の黄ばみ
口腔内の異常も老化のサインです。例えば、歯周病やそれに伴う強い口臭、歯の色の黄ばみなどがあります。
口臭や歯の色は、日々のお手入れでも気付きやすいポイントです。日頃から口の中をチェックしておきましょう。
食欲や味覚の変化
犬は高齢になると、食欲不振になるケースがあります。高齢になり運動量が減って、消化液の分泌が少なくなり胃腸が活発に働かないため、食欲が低下しやすいのです。
また、老化により味覚や嗅覚が変化して、食の好みが変わることもあります。以前は大好きだったフードを残したり、食事に時間がかかるようになったりすることも増えてくるのです。
一方で老化により、食欲旺盛になる犬もいます。この場合は、構ってほしい気持ちやわがままが強くなっている可能性があります。
階段の上り下りやソファへの飛び乗りを躊躇する
犬は加齢とともに筋力が低下したり、関節に痛みを感じたりするため、階段の上り下りやソファへの飛び乗りを躊躇するようになります。さらに、少しの段差でも躓きやすくなるでしょう。
特に大型犬になるほど体重が重いので、関節に負担がかかりやすいです。ただし、腰や足の不調が原因である可能性も否定できないので、老化のサインと言い切れないこともあります。
散歩に行きたがらない・歩くのが遅くなる
犬が散歩に行きたがらないことも、老化のサインである場合が多いです。また、散歩に行ってもすぐに帰りたがったり、歩くのが遅くなったりするケースもあります。
犬は後ろ脚から衰えていくので、散歩の際に真後ろから見て、後ろ足がまっすぐではなく「ハの字」になっていたら、老化が始まっている可能性が高いです。
ただし、他の病気が原因で散歩を嫌がることもあるので、病院で診てもらうことをおすすめします。
睡眠時間の増加
老犬になると、睡眠時間が長くなりやすいです。昼間も頻繁に眠っていたら、老化のサインだと考えましょう。
寝ている時間が長くなると、動かない時間、頭を使わない時間が増えるため、認知症の発症にもつながりやすくなるので注意が必要です。
トイレの失敗
犬も老化すると、排尿に関わる神経や筋肉の働きが弱くなります。排尿間隔が短くなったり、トイレを失敗してしまったりすることが増えやすいです。
トイレの場所は覚えているけど歩くのも遅くなっているため、たどり着く前に漏らしてしまうこともあります。
そのほか
ここまでお伝えしたもの以外にも、犬には以下のような老化サインがあります。
- 耳垢が増える
- 急に太る
- 急に痩せる
- 吠えやすくなる
- 怒りっぽくなる
愛犬の老化のサインを見逃さないように、日頃からしっかりと様子を観察しておくことが大切です。
老犬がかかりやすい病
犬は老化が進むと体力や免疫力が低下するため、病気になりやすいです。特に気をつけたい主な病気は、以下のとおりです。
- 悪性腫瘍(ガン)
- 心臓病
- 慢性腎臓病
- 糖尿病
悪性腫瘍(ガン)
老犬がかかりやすい代表的な病気は、悪性腫瘍(ガン)です。細胞の異常増殖によって悪性の腫瘍となって、様々な症状を引き起こします。
心臓病
加齢により心臓の機能は低下するため、心機能の低下による病気の発症率が高くなりやすいです。これによりかかりやすくなる代表的な犬の病気が、僧帽弁(そうぼうべん)閉鎖不全症と心筋症です。どちらも放置すると心臓の機能不全を引き起こします。
慢性腎臓病
腎臓も老化によって機能が衰えやすいです。腎臓には、体内の老廃物や有害物質を取り除き、尿として排出する役割があります。
しかし、年を取ると腎臓の機能が低下し、これまでの働きができません。一度衰えてしまった腎臓の機能は回復することがないため、毎日のケアが必要になります。
糖尿病
糖尿病は、インスリンと呼ばれるホルモンが不足することで、高血糖状態が続き、様々な代謝異常を引き起こす状態です。進行すると白内障や腎臓病といった合併症を引き起こすことがあるので、注意しなければいけません。
老化した犬の末期症状
犬の老化が進行すると、やがて辛い別れが訪れます。お別れを覚悟しておくためにも、次のような犬の末期症状を理解しておく必要があるでしょう。
- 食事も水分も摂らない
- 意識が朦朧とする
- 体温が低下する
- 痙攣をおこす
食事も水分も摂らない
犬は末期になると、食事も水も受け付けなくなってしまいます。スポイトで流動食や水を口に入れてあげても飲み込めなくなるでしょう。
意識が朦朧とする
愛犬の意識が朦朧としているときは、名前を呼んでも目を開けるなどの反応もほとんどありません。目を開けていてもうつろな状態です。
体温が低下する
体温の低下も犬の末期症状の特徴です。ひんやりした愛犬の身体にショックを受ける飼い主さんも少なくありません。
痙攣をおこす
最期が近づいてくると、犬は痙攣や震えを起こすことがあります。突然足をばたつかせても、慌てて無理に押さえつけないでください。愛犬が痙攣を起こしたときの対応がわからない場合は、獣医師に相談しましょう。
老化した犬を飼う際のポイント
視力や聴力、体力が低下した愛犬のお世話をするときは、さまざまな配慮が必要です。愛犬が安心して過ごせるようにするには、以下の5つのポイントを心がけてください。
- 安全・安心な生活環境
- 食事環境を整える
- 徹底した温度管理
- コミュニケーションを密に
- 定期的な健康チェック
- 病気の可能性も疑う
安全・安心な生活環境
高齢期を迎えた愛犬が、家の中で足を滑らせない工夫が必要です。フローリングの場合、カーペットを敷き詰めるとよいでしょう。
老犬は粗相をしてしまうことも増えるので、洗えるタイプのものがおすすめです。例えば、タイルカーペットは、部分的にはがせる上に滑り止め効果もあります。さらに、足腰に負担をかけないように、段差に小さな階段やスロープを付けるのもおすすめです。
また、視力の低下により、家の中でもあちこちぶつかることが増えてくることがあります。しかし、目が見えなくても住み慣れた室内の配置は感覚的に覚えているため、むやみに室内のインテリアを変えないようにしましょう。
家具の角にはクッションガードをつけるほか、愛犬のベッドまわりには物を置かないなどの工夫が必要です。壁伝いに移動することも考えられるので、障害物となる家具はできるだけ取り除いてあげてください。
食事環境を整える
食事や水のトレイの高さも配慮してあげることが必須です。老犬になると、食事のとき下を向き続けると、首へ負担がかかりやすくなります。食器を高い位置に置いてあげたり、お皿の下に台を置いたりして負担のない高さにしましょう。
食事量が減ったときや食べ辛そうなときは、フードにお湯をかけたり、少し加熱したりしてみてください。風味が増すので、愛犬が食べる可能性があります。
また、食事を老犬用に切り替えていくことも必要です。ただし、一気に食事を老犬用に切り替えると消化器官に負担になったり、ストレスになるため、最初はブレンドするなどして、徐々に切り替えていくようにしましょう。
徹底した温度管理
犬は老化すると、体温調節機能も衰えてきます。寒さや暑さに弱くなるため、犬が快適に過ごせるように室温を調整しましょう。エアコンや空気清浄機を使う際は、愛犬に直接風が当たっていないか確認してください。
コミュニケーションを密に
老犬は眠っている時間が長くなります。優しく声掛けしたり、体を触ってマッサージしたりして、コミュニケーションを大事にしましょう。
犬は年を重ねるにつれて、分離不安が強くなります。しかし、飼い主さんが話しかけることで愛情を感じ、耳や目の機能が衰えていく愛犬の不安を取り除くことができるのです。
定期的な健康チェック
犬は、言葉で体調不良やケガなどを伝えることができません。飼い主さんが健康チェックして、小さな変化も見逃さないことが重要です。
被毛や皮膚の状態、目や口、耳の周りなどの見た目やニオイなど変化がないか確認しましょう。また、食事量の変化や排泄の状態なども重要です。
ブラッシングタイムや歯磨きタイムは、健康チェックとスキンシップが取れるので、一石二鳥です。また、年に2回は動物病院で健康診断も受けてください。
病気の可能性も疑う
単なる老化だと思っていたら、実は病気だったというケースもあります。極端に食事量が減ったときは、口の中に異常が起きていたり胃腸が弱っていたりするかもしれません。
また、階段の上り下りを躊躇したりよぼよぼ歩いていたりする場合は、椎間板ヘルニアや関節疾患の可能性もあります。
老化が原因と決めつけず、病気の可能性も疑うことが愛犬の命を救うことになるのです。
愛犬に寄り添い老化サインを見逃さないことが重要
犬の老化が始まる時期は、犬種や体の大きさによっても異なりますが、目安となる年齢を参考にしてサインを見逃さないようにしてください。
犬自身も、できなくなることが増えたり体力が低下したりと不安に感じます。飼い主さんは、愛情を持って注意深く見守ることが重要です。
また、老化が原因ではなく、病気を発症しているケースもあるため、少しでも違和感があれば、すぐに動物病院に連れていきましょう。
執筆:いぬのあのね編集部
イラスト:ヴァイクセルブラウン花咲季
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