特定危険犬種とはどんな犬? 飼う際の注意点や日本での制度などを解説

「特定危険犬種はどんな犬?」
「特定危険犬種は飼ってもいいの?」
「特定危険犬種を飼育するときの注意点は?」

海外では、特定の犬種の飼育自体を禁止するケースもありますが、日本では特定危険犬種の飼育を禁止・制限する法律はありません。しかし、一部の自治体では、「特定犬制度」が実施されています。

今回は、日本の特定危険犬種についてご紹介します。飼う場合の注意点や事故を防ぐ方法などもお伝えするので、ぜひご一読ください。

特定危険犬種とは

特定危険犬とは、人に危害を加える恐れのある犬、咬傷事故を起こした際に重大な事故になる可能性が高い犬などのことです。まず、日本における特定危険犬種の現状など、以下の内容についてご紹介します。

  • 日本で特定危険犬種を飼うことはできる?
  • 特定危険犬にはどんな危険があるの?
  • 特定危険犬制度が作られた理由

日本で特定危険犬種を飼うことはできる?

日本では、特定犬種の飼育を禁止・制限する法律はありません。したがって、日本で特定危険犬種を飼うことは可能です。

しかし現在、札幌市・茨城県・水戸市・佐賀県の4つの自治体で、条例に基づく特定犬制度が実施されています。

条例に基づく遵守事項がない自治体でも、特定犬種の飼い方について注意喚起するケースもあるので、飼う前に確認が必要です。

特定危険犬種にはどんな危険があるの?

特定危険犬種を飼うということは、犬にかまれるという危険があるということです。日本では、犬による咬傷事故が年間4,000件以上発生しています。

このうち、野犬による事故はわずか0.8%です。つまり、事故を起こした犬は、ほぼ飼い犬ということがわかります。

事故を起こした犬の犬種は明確ではありませんが、特定危険犬種の気質や体格を考慮すると、犬に悪気はなくても重大な事故につながる可能性が高いです。実際に茨城県では、放たれていた大型犬による咬傷死亡事故が制度導入のきっかけになりました。

もちろん、特定危険犬に定められている犬すべてが危険というわけではありませんが、事故につながる可能性があることを十分理解していく必要があります。

特定危険犬種制度が作られた理由

日本では、特定危険犬種に指定されている犬を飼うことが可能です。しかし、飼い主さんが犬に関する知識を持っていなかったりきちんとしつけしなかったりすると、攻撃的な犬になる可能性があります。

特定犬制度は、飼い主さんの飼育管理意識を向上させ、咬傷事故を防ぐことが目的といえるでしょう。

特定危険犬種に定められている犬種

特定危険犬種に定められている犬種は、大きく分けて3つに分類できます。

  • 人に危害を与える恐れがある犬と定められている犬種
  • 大型犬
  • 知事が指定する犬

人に危害を加える恐れがある犬と定められている犬種

特定犬制度を実施している自治体によって多少異なりますが、ほぼ同じ種類の犬種が人に危害を加える恐れがある犬として定められています。

例えば茨城県では、特定危険犬種に定められているのは以下の8犬種です。

  • 土佐犬
  • 秋田犬
  • 紀州犬
  • ジャーマン・シェパード
  • グレート・デーン
  • ドーベルマン
  • セント・バーナード
  • アメリカン・スタッフォードシャー・テリア

大型犬

大型犬も自治体によって定義が若干異なりますがほぼ同じです。茨城県では、雑種犬を含む体高60cmかつ体長70cm以上の犬、佐賀県では、体高65㎝以上の犬が大型犬に定められています。ちなみに、犬種は関係なく雑種犬も含みます。

大体ゴールデンレトリ―バーよりも大きいと、大型犬に該当する可能性があると考えてください。 狩猟犬や闘犬、軍用犬として育てられた犬種が多いのも大型犬の特徴です。

一般的に、警戒心が強く飼い主さんには忠実ですが、それ以外の人や動物に対しては、敵対的になりやすい気質の犬が多いです。大型犬と人間がぶつかっただけでも、重大な事故につながる可能性があります。

知事が指定する犬

知事が指定する犬も、特定危険犬種に定められています。例えば、茨城県では「危険性があるとあらかじめ判断される犬」も特定危険犬種です。

危険性があるかどうかの指定の基準は、自治体によって異なりますが、佐賀県では「危険性(咬傷事故の再発等)のおそれがあり知事が指定する犬」が基準となっています。ただし、生後9ヶ月未満の犬、身体障害者補助犬は除きます。

海外の特定危険犬種に対する規制

海外では、特定危険犬種に対してどんな規制があるのでしょうか?ここでは、幾つかの国の規制をご紹介します。

  • アメリカ
  • イギリス
  • オーストラリア
  • その他

アメリカ

危険犬種には、ピットブルタイプを中心に特定の犬種が指定されています。アメリカは、日本よりも厳しく、特定危険犬種の飼育にはさまざまな制限があります。地域によっては、飼うこと自体が違法となるところもあります。

「Breed Specific Legislation(BSL)という法律によって、特定危険犬種に固有の規制が行われているのです。なお、州によって法律は異なります。

イギリス

イギリスでは、ピットブルテリア、土佐犬、ドゴ・アルヘンティーノ、フィラ・ブラジレイロの4犬種が危険犬種に該当します。「Dangerous Dogs Act」という法律で、危険犬種に指定された犬は、飼育、繁殖、販売、譲渡、遺棄などが禁止されています。

例外を認められ飼育する場合も、自宅敷地外に連れ出すときは、口輪とリードを着用させることが必須です。

オーストラリア

オーストラリアでは、ドゴ・アルヘンティーノ、ブラジリアン・ガード・ドッグ、アメリカン・ピットブルテリア、土佐犬、プレサ・カナリアの5犬種が危険犬と指定され、法律によって輸入が禁止されています。

これらの犬種を所有する場合は、州によって若干の違いはありますが、口輪の装着、避妊・去勢手術が必須のことがほとんどです。

その他の国

デンマークでは、13種類の犬が危険犬種に指定されています。該当する犬の飼育、該当する犬を連れての入国も禁止です。違反した場合、最悪な場合殺処分されることもあります。

ウィーンでは、11種類の犬が危険犬種に指定されています。危険犬を飼育することはできますが、その際、所有者が十分に管理できるライセンスを所持することが必須です。

ポルトガルでは、7種類の犬が危険犬種に指定されています。飼育は可能ですが、ウィーン同様、飼育に対するライセンスが必須です。

ライセンスを取得できるのは、「18歳以上で心身共に健康・適性検査に合格・前科なし」とすべての条件を満たしている者に限られます。

特定危険犬種を飼う場合の注意点

特定危険犬種を飼う場合、危険性を理解した上で以下の3つに注意する必要があります。

  • 標識を掲示する
  • 檻の中で飼う
  • 逃走したらすぐに通報する

標識を掲示する

特定犬を飼っていることがわかるように、訪問者や通行人からよく見えるところに、標識を掲示してください。または、ステッカーを貼りましょう。

自治体がシールを配布していることもありますが、自分で作成が必要なケースもあります。まずは、自治体でシールを配布しているか確認した上で、自分で作成する必要がある場合は、標識の大きさや掲示する内容などの詳細を確認しましょう。

檻の中で飼う

特定犬種は、檻の中で飼育する必要があります。茨城県では、「上下四方が囲まれている」「十分な強度がある」「人に危害を加えられない構造」の檻と指定されています。

清掃がしやすく、日よけや雨よけがついており、犬が快適に過ごせることもポイントです。また、檻の底が土の場合、設置場所を約20cm埋めるか、基礎を打つ必要があります。

犬が盗まれたり、犬が逃走したりしないように、檻には南京錠やダイヤル式などの錠をつけてください。鍵のかけ忘れや扉の破損がないか日頃から注意が必要です。エサ入れは、檻の外から交換できるものがよいでしょう。

逃走したらすぐに通報する

万が一、特定危険犬種が逸走した場合、すぐに保健福祉事務所および警察へ通報してください。飼い主さんは、咬傷事故等の発生を防がなければいけません

通報先は自治体によってさまざまで、水戸市では動物愛護センター、佐賀県では保健福祉事務所と警察に通報することが決められています。

飼い犬による事故を防ぐ方法

飼い主さんは、飼い犬が事故を起こさないように努める必要があります。これは、特定危険犬種に限ったことではありません。

しかし、特定危険犬種の場合は、特に大きな事故につながる恐れがあるので以下の3つを守ってください。

  • 犬の性質を理解する
  • 毎日必ず運動させる
  • 責任を持って飼う

犬の性質を理解する

犬は、さまざまな目的をもって品種改良が行われてきたため、犬種によって素質や特性が異なります。

例えば、ジャーマンシェパードは、護衛や使役など多目的に品種改良が行われた犬種なので、忠誠心が強く落ち着きのある性質です。しかし、きちんとしつけていないと、興奮して人や犬に飛びついて怪我をさせてしまう可能性もあります

秋田犬も賢く我慢強いですが、自己主張が強い面もあるので、しつけを十分にしていないと勝手に行動したり攻撃的になったりしやすいです。

また、体が大きいため、軽くじゃれついたりかんだりするだけでも人や犬に怪我をさせる可能性があります。

一方、チワワは小柄で可愛らしいですが、注意深く勇敢なところもあります。このように、犬種によって素質や特性があるので犬を飼う場合は、事前に調べて理解しておくことが必須です。

毎日必ず運動させる

運動不足は、犬にとって最大のストレスです。なかでも特定危険犬種に指定された犬種は、体が大きいため、それなりの運動量が必要になります。

毎日散歩に行かないと、エネルギーが有り余ってしまうでしょう。その結果、ストレスが溜まり、人や動物に対して攻撃的になる可能性があります。

犬種にもよりますが、1時間ほどの散歩を1日2回が望ましいです。散歩後も元気いっぱいであれば、もう少し散歩の時間を増やすことをおすすめします。

責任を持って飼う

犬を飼ったら、例えどんな理由があっても最後まで責任をもって飼育しなければなりません。ルールやマナーを守り、他の人に迷惑をかけないように飼育・管理する必要があります。

「うちの犬は大人しいから大丈夫」と散歩中にリードを取ったり、放し飼いにしたりするのも絶対にNGです。日頃は穏やかな犬でも、いつ攻撃的になるかわかりません。ましてや、特定危険犬種は事故が絶対に起きないように徹底した対策が必要です。

また、犬の飼育には手間やお金がかかります。特定危険犬種は体が大きい傾向にあるため、食費や医療費などの金銭的負担も大きくなるのです。

「一生責任持って飼育する」という覚悟が持てなければ、特定危険犬種を飼ってはいけません。

特定危険犬種の飼育には覚悟と危機意識が必須

今回は特定危険犬種について、詳しく解説してきました。日本では特定危険犬種を飼うことができますが、迎え入れるには相当の覚悟と危険意識が必要です。

それぞれの犬種の性質や個別の性格を十分に理解した上で、しつけを適切に行わなくてはなりません。

そして何よりも、周りの人にケガをさせることがないように、万全な対策が必要です。家族の一員として愛情を持って接しながらも、事故が発生することのないように、常日頃から十分に注意しましょう。

執筆:いぬのあのね編集部
イラスト:ヴァイクセルブラウン花咲季

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